【目的】
現在、漢方薬は病院診療で頻繁に処方されたり、ドラッグストアなどで容易に手に入れることが出来たりと、われわれの日常において非常に身近な薬になっている。
これらの理由として、漢方薬は非常に薬効がマイルドであり、副作用も軽微であるという認識があるからである。
しかし、そのように副作用が少ないと言われている漢方薬にも重大な副作用は報告されている。
全漢方薬の半分以上の割合を占める副作用に「偽アルドステロン症」があり、その副作用はカンゾウという生薬によって引き起こされる。
主な症状は低カリウム血症、血圧上昇である。
今回の検討では、偽アルドステロン症の疑いのある患者が、漢方薬服用の前後、その後の処方修正による検査値の経時的推移を検討した。
【結果】
83歳、女性患者Aさん、高血圧の症状で以前から降圧剤であるロサルタンカリウム/ヒドロクロロチアジドの合剤を服用していた。
今回、カンゾウ含有の漢方薬の防已黄耆湯を服用したところ、以前まで140/70前後であった血圧値が、常時180/80まで上昇した。
不安に感じ、血液検査を行ったところ、カリウム値が3.3まで低下していた。
そこで、防已黄耆湯を休薬し、選択的アルドステロン阻害薬であるエプレレノンを服用したところ、血圧値は130/70まで低下した。
現在、エプレレノンは処方されていないが、経過は良好である。
【考察】
現在、漢方薬は全210種類あり、その7割近くの漢方薬にカンゾウは含有されている。
そのため、今後は漢方薬を服用される方が増加するにつれ、このような偽アルドステロン症の疑いのある患者も増加することが予想される。
また、今回の患者が服用していた降圧剤に含まれているヒドロクロロチアジドは血清カリウム値を下げる作用が報告されているため、より顕著に症状があらわれたと考えられる。
高齢者の方は、高血圧症を罹患されている方が多いため、降圧剤と漢方薬との併用は、より慎重に経過を観察する必要がある。
今回の症例を解析し、再検討することで、今後同様の症例がみられた患者に対し、薬剤師として適切な対処ができるようにしていきたいと思う。
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